プロフィール

URL:https://www.fnn.jp/articles/-/1098810
| 名前 | 高見 素直(たかみ すなお) |
|---|---|
| 年齢 | 享年58歳 |
| 犯罪 | 放火・殺人(死刑) 覚醒剤取締法違反 (懲役1年2ヶ月・執行猶予3年) 器物損壊(罰金5万円) |
| 現在 | 死亡 (2026年8月21日午前に死刑執行) |
精神疾患・時系列
過去の覚醒剤の使用により誘発された持続・慢性的な精神病性疾患を患う。
覚醒剤使用後の1992年頃から「人に見られている、笑われている」「暴力団に追われているという感覚」といった被害念慮を持ち続ける。
→暴力団から逃れようと思い、北海道に行き、指を切り落とし自殺を図る。
1992年2月から4月まで病院に入院し、覚醒剤精神病と診断され治療を受ける
→暴力団から追われている感覚はなくなったものの、「誰かに見られている、笑われている」といった感覚は残り続ける。
退院後、福岡県に移り住み、溶接工を1年程・ダンプカーの運転手を4年9ヶ月ほど勤める。(この間に結婚し、2人の子供をもうける)
妻から収入を増やして欲しいなどと言われたことから、1998年頃に長距離トラック運転手に転職。
(2泊3泊の行程を1週間で2,3回ほど行う厳しい勤務状況)
→1998年頃に過度の疲労から急性精神病状態になり幻聴を聞く。この幻聴は10日間程で消失。
(その後、聞く気がなければ聞こえない状態に)
幻聴を聞いてから幻聴の内容を「みひ」という超能力者からのものと捉え、自身の不都合な事柄を「みひ」やその背後にいると認識している「マーク」という集団に結びつける妄想を構築。
※「みひ」「マーク」は被告が妄想上で認識していた架空の存在
2001年5月、高速道路のサービスエリアで乗用車にドライバーで傷をつけ、器物損壊で罰金5万円の略式命令を受ける
《動機》
・「みひ」らに仕返しがしたい
・嫌がらせのしわ寄せを誰かにしたいと思った
・「みひ」らに片棒を担いでいる世間の人に復讐することで「みひ」らに対する世間の風当たりが強くなると思った
・「みひ」らに片棒を担いでいる人たちに腹いせをしたい
→この犯行により、勤務先を解雇。同年7月に離婚。
フォークリフトの運転やタクシーの運転の仕事をするも仕事内容・給料面に対する不満等から短期間で辞める。
合計6社において、タンクローリーの運転手等を勤めるも退職
(最初の1社では、勤務していた部門が廃止。次の2社では、会社が事実上倒産したり税務署の査察が入ったりする。鹿児島でのダンプカーでの仕事は、半年で仕事が少なくなる。大阪に来てからの勤務先では、給料の遅配がある。
などでいずれの会社も退職に至る)
→鹿児島に行く前頃から、仕事を転々とせざるを得ないことも「みひ」らの嫌がらせによるものだと考えるようになり、生活に行き詰まったら、不特定多数の人を殺そうと考えるようになる。
2009年4月末に仕事内容や給料に対する不満で会社を退職
→以後、求職活動を続けるも就職できず
死刑になるほどの事件を起こせば「みひ」や「マーク」に世間批判が強まり、活動を自粛すると判断し、無差別殺人を実行。
※被害念慮
さまざまな物事や他人の言動が、自分に対して向けられていると敏感になる状態。
「自分に悪意を向けられているのではないか」と過敏に感じる状態を指す。
被害妄想との違いは、訂正できるかどうかという点。
被害妄想は「悪口を言われている」「いやがらせを受けている」といった内容を事実だと確信しており、訂正することができない。
一方、被害念慮は「思い過ごしだった」と自身で気づいたり、説明を受けて訂正したりすることができる。
※覚醒剤に起因する精神病について
一般的な薬物は連続使用すると効果が減弱し、同一の効果を得るために量を増やす必要が生じる。
しかし、覚醒剤(アンフェタミン類)では、連続使用により幻覚を引き起こす作用が逆に増強される「逆耐性現象」が生じる。
このため、少量の使用でも統合失調症様の幻覚・妄想が出現しやすくなる。また、使用中止後も、ストレスが覚醒剤使用時と同様のドーパミン放出を引き起こすため、幻覚や妄想を主とする急性精神病状態が再燃しやすくなる。
この再燃しやすさは長期間持続し、場合によっては生涯残存することがある。
犯罪歴
大阪市 パチンコ店放火(5人死亡・10人重軽傷)
《犯行》
2009年7月5日16時14分頃、自宅近くの大阪市此花区にあるAビル内のパチンコ店の店内でバケツに入ったガソリンをまき、そのガソリンにマッチで着火して放火しました。
パチンコ店は全焼し、Aビルは焼損しました。この事件で5人が死亡し、10人が重軽傷を負いました。
翌日、両国にて自首。
《死亡者》
| 死亡日 | 場所 | 死因 | |
| B 69歳 | 7月5日 | 現場のパチンコ店 | 焼死 |
| L 20歳 | 〃 | 〃 | 〃 |
| M 72歳 | 〃 | 〃 | 〃 |
| N 62歳 | 〃 | 〃 | 一酸化炭素中毒 |
| O 50歳 | 8月6日 | 病院 | 広範囲熱傷を原因とする敗血症 による多臓器不全 |
《負傷者》
| 負傷状況 | 治療日数 | 後遺症 | |
| D 48歳 | 両足大腿熱傷(Ⅲ度) 両手・両前腕熱傷(Ⅱ度) 顔面熱傷(Ⅰ度) | 加療622日間 | 瘢痕拘縮等 |
| Q 26歳 | 全身熱傷(Ⅱ度) 気道熱傷 廃用症候群 | 全治見込み未定 | 〃 |
| R 51歳 | 両上肢・両肩・頸部・顔面 熱傷(Ⅱ度) | 〃 | 瘢痕等 |
| S 48歳 | 全身広範囲熱傷(Ⅰ~Ⅲ度) | 〃 | 瘢痕拘縮 |
| T 28歳 | 広範囲熱傷 廃用症状 | 〃 | 足関節の可動制限等 |
| U 50歳 | 両足熱傷(Ⅱ度) | 全治10日間 | なし |
| V 46歳 | 両足火傷(Ⅱ度) | 全治13日間 | なし |
| W 52歳 | 左足火傷(Ⅱ度) | 通院加療 約2週間 | なし |
| Y 74歳 | 左足熱傷 | 〃 | なし |
| Z 45歳 | 左耳・左肘熱傷(Ⅰ度) | 全治約1週間 | なし |
※熱傷Ⅰ~Ⅲ度について
Ⅰ度:表皮のみのやけど。通常数日のうちに傷跡がなくなる。
Ⅱ度:表皮だけでなく真皮にまで及んだやけど
Ⅲ度:表皮・真皮まででなく脂肪・筋肉といった皮下組織にまでやけどが及んだ状態。
※用語説明
敗血症:感染症によって引き起こされた過剰な免疫反応によって、生命を脅かす臓器障害が起きる状態
瘢痕拘縮:傷跡が引きつれて、思うように関節が動かせなくなる状態
瘢痕:傷跡のこと
廃用症状:体を動かさない状態が続くことによって引き起こる、二次的な身体の機能低下
《犯行理由》
・自身の不遇を「みひ」や「マーク」(被告が実在すると思い込んでいた架空の存在)の嫌がらせと捉え、それらを世間の人々が放置していると思い込み世間の人々にも恨みを募らせていた。
・「みひ」らを放置している世間の不特定多数の人々への復讐として無差別殺人を選択
・以前から将来生活に行き詰まったら、不特定多数の人を殺して『みひ』らや世間に復讐しよう」とかねてより無差別殺人を考えていた
・2009年6月末頃、求職活動をしても一向に再就職できなかったため、このことも「みひ」らの嫌がらせのせいであり、自身をまともに生活させないようにしていると考え、無差別殺人の実行を決める
《本件パチンコ店を選んだ理由》
・刃物で通り魔のように何人も殺すことや雑居ビルに放火することも検討したが、確実に多数の人を殺せるようにパチンコ店にガソリンを使って放火することを選択。
・隣にビルがあり、人目につかずガソリンをバケツに移すことができる。
・商店街の端に位置し、犯行後逃げるの適していたと考えたため
《事件を起こす予兆》
・2001年に器物損壊事件で逮捕された頃から、自分が行き詰まったとき・どうしても許せない人間が現れたときに大きな事件を起こそうと考えていた。
・鹿児島県に行く前頃からは、生活に行き詰まったら、不特定多数の人を殺そうと考えるようになる。
確実に多くの人を殺せる方法を考え、営業中のパチンコ店に放火し、店内にいる客や店員等を殺害することを思いつく。
事件同年7月初めには、客の多い日曜日である同月5日に犯行に及ぼうと考え、身辺整理をする。
仕事が見つかれば、犯行に及ぶ必要がないと思い、友人から仕事を紹介してくれるのを待つ。
犯行当日まで電話はなく、同日14時頃に犯行を決意。ホームセンターでガソリンの携行缶・バケツやマッチ・逮捕後の留置施設で使用するための下着類を購入するなど準備を進める。
(当日の午前中は、テレビを見るなどして過ごす)
→最終的に犯行を決意するに至った理由について「このまま,ずるずるしていても,時間ばかりが過ぎてしまう。そろそろふんぎりつけて,行動に移さないといけないと考えた」旨述べている
一旦自宅に戻り、マッチに確実に火がつくことを確認し、事件現場のパチンコ店に向かう
パチンコ店に着くとガソリン購入に邪魔になるバケツを付近の自動販売機の上に置き、携行缶を持ってガソリンを買いに行く(10L購入)
→買いに行く途中で『みひ』の「かわいそうなことしなさんなよ」という幻声を聞くも無視して犯行に及ぶことにする
パチンコ店に戻ると警備員に怪しまれないようにしばらく付近を歩き回り、警備員がいなくなると、バケツを手に取り、バケツを手に取り人目のつかない隣のビルの階段まで移動し、携行缶内のガソリンをバケツに移す。
(バケツを持って移動するのに不便だということで、ガソリンの量を8分目程度にとどめる)
ガソリンの入ったバケツを左手に持ち、すぐに火をつけられるようにマッチ箱を口にくわえて、本件パチンコ店の東側出入口から店に入り、店内の床にガソリンを撒き、マッチに火をつけ放り投げ、自身は店外に出る。
(床にまいたのは、タバコを吸っている人がいるかもしれないため、引火の危険を避けるためには足元にまいた方がよいと、咄嗟に判断したため)
乗ってきた自転車を現場に置いたまま自宅に戻る
→当時の気持ちについて「達成感とともに,熱がっている人を見て,酷いことをしたという思いも抱いた」旨述べている。
大阪を離れ、翌日、岩国において自首
→大阪を離れた理由について、「救急車や消防車の音が気になり、自宅にいても落ち着かなかった。とりあえず西に向かうことにした。防犯カメラに写っていることなどが分かっていたので、いずれ捕まるが、そうなれば死刑になり、2度と社会に戻れないので、気持ちを整理する時間がほしかった。翌日,岩国まで行って満足できたので、そこで自首した」旨述べている
裁判
【大阪地方裁判所】
《判決》
2011年10月31日に死刑判決。
→大阪高裁・最高裁が被告側の控訴・上告を棄却し、刑が確定。
【量刑の理由】
・不特定多数の人々を殺すために悲惨な殺害方法を計画・実行し、罪のない多数の者の生命を絶った責任はあまりに重大である。
・大量の無差別殺人の実現に向けた強い意思に基づく計画的で極めて残虐な犯行
・世間にいわれのない恨みを抱いたことについては、精神疾患の影響を否定できないが、その恨みを晴らすために無差別殺人を決断した被告自身の選択・判断は身勝手極まりない。
・被告人は、犯行後自首し、その後捜査に協力した理由は「みひ」らへの復讐のためで反省などからこのような行為に出たものではない以上、被告人に有利に考慮することはできない。
・今回の犯行は、あまりに凶悪で重大なものなため、更生の可能性を過度に有利に考慮できない。
《責任能力》
・精神疾患が犯行に影響していること自体は否定できないが、その影響は間接的なものにとどまり、被告人の主体的な判断や行動を制約するものではない
→完全責任能力を有していたことは間違いないとの結論
《絞首刑が合憲か否か》
この裁判では、弁護側が「絞首刑が憲法36条に反する残虐な刑罰に当たる」と主張しました。
また、「頭部離断に至った場合は断頭刑となり、法の定めない刑の執行されたと憲法31条にも反している」とも主張しています。
※憲法36条:公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。
※憲法31条:何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。
[裁判所の判断]
憲法31条に反するものではない
・死刑は、受刑者の意に反してその生命を奪うことによって罪を償わせる制度であるため、受刑者に精神的・肉体的苦痛を与えることは避け難い。
・憲法も死刑制度の存続を許容する以上、不可避のやむ得ないもの考えていることは明らかであり、憲法36条の「残虐な刑罰」にあたるのは、考え得る執行方法の中でも、特に惨たらしい場合ということになる。医療のように対象者の精神的・肉体的苦痛を極限まで和らげ、それを必要最小限にとどめることまで要求されないことは明らか。
・自殺する場合に比べ、安楽に死を迎えられるということになれば、弊害も考えられる
・死刑に処される者は、それに値する罪を犯した者であり、執行に伴う多少の精神的・肉体的苦痛は当然甘受すべき。
・頭部離断は、例外的に事故として生じるものであると認められ、多くの場合、頚部内部組織の離断にとどまる。極めてまれな例外的な場合を一般化し、絞首ではなく断頭であるとするのは適切でない。
《裁判官》
・和田真(裁判長)
・竹林仁美
・華井俊樹
【大阪高裁】
《判決》
一審の裁判員裁判判決を支持し、弁護側の控訴を棄却
《裁判官の判断》
「妄想自体が犯行に直接影響を与えたとはいえない」と完全責任能力を認める
《裁判官》
・中谷雄二郎(裁判長)
【最高裁判所】(第3小法廷)
《判決》
2016年2月23日、被告の上告を棄却し、死刑が確定。
《裁判官の判断》
・「犯行前後で終始一貫性のある合目的的な行動をしており、精神症状が犯行に及ぼした影響は間接的であって大きなものではない」と責任能力を認める
・弁護側の絞首刑について「憲法が禁じる残虐な刑罰だ」と憲法違反だという主張に対し、「死刑制度が執行方法を含めて合憲なことは判例から明らかだ」と退ける
・5人全員の意見が一致で上告を棄却。
《裁判官》
・山崎敏充(裁判長)
・岡部喜代子
・大谷剛彦
・大橋正春
・木内道祥
記事
覚醒剤取締法違反
1991年頃から覚醒剤を使い始め、半年ほど使用を続けた後、覚醒剤取締法違反で逮捕されました。
逮捕後は、覚醒剤を使用していない。
《判決》
1992年1月、懲役1年2ヶ月・執行猶予3年(保護観察付)の判決
記事
器物損壊
2001年、他人の乗用車にドライバーで傷をつける事件を起こして、罰金5万円略式命令を受けました。
→仕事は解雇され、同年7月には離婚。